退職を決定的なものにした上司の言葉

派遣会社と契約して派遣として務め、派遣先での仕事ぶりを評価され、2ヵ月程度で派遣会社の正社員に昇格したのですが、この派遣会社を退職する決意をした経緯を記していきたいと思います。

当初の肩書は契約社員で業務内容は派遣先の仕事を請け負うというものでした。その後社員になると、上司からは将来的には労務管理を任せるということを言い渡されました。私は、自分の仕事が評価されたことへの喜びも手伝って、二つ返事でその申し出を受けたわけですが、今思えば、ここで選択を誤ったのかもしれません。

そもそも、その会社の取引先へ派遣される正社員と契約社員の違いは、契約更新の有無とボーナスの有無、そして、固定給かどうかだけです。それ以外は殆ど変わらず、昇給もありません。しいて言えば、正社員は会費という名目で月の給料から5000円ほど徴収されるぐらいでしょうか。しかも、正社員がボーナスを支給されると言っても、給料の1ケ月分あるかないかという程度で、世間一般の水準よりも劣ります。

ただ、労務管理などの管理業務に就けば、待遇は世間一般のそれと同等になるという話だったので、私はとりあえずそこを目指す事にしたのです。

派遣先は医療機器などを作っている工場で、所属部署は、材料の納入と在庫管理、材料を各工程に引き渡す準備や工場内で使う備品の発注などを行うところです。私はその部署で、色々なスキルを身につけ、派遣されて1年を過ぎるころには、責任者と同等のポジションに就いていました。これも労務管理という目指すものがあったからこそだと思います。ですが、いくらスキルを身につけても、給料面での待遇は変わりません。それでも目指すものがあったので、私は腐ることなく仕事に打ち込んだのです。

さらに、1年経つと、今度は生産管理という部署に配置転換されました。そこは、生産計画や納品先への対応、製品の進捗情報の管理、各工程への指示などが主な業務で、責任が重く圧し掛かる部署です。それに加えて、残業も多く、休日の呼び出しも少なくありません。ですが、ここでも目指すものを心の支えにして、ある程度の結果を残し続けたのです。

そして、さらに3年の月日が流れました。私が、派遣会社の正社員になって5年です。それでも、昇給はありません。この時の私は、派遣先の社員さんが昇給やボーナスの話をしていると憤りを感じるようになっていました。いや、もともとその感情はあったのですが、目を逸らしていただけかもしれません。そして、私は遂に、それ相応の決意をして上司に直談判することにしたのです。しかし、上司の回答は、まさに唖然とするものでした。

「おまえは赤字社員だから昇給はありえない」つまり、こういう事です。派遣先から会社に支払われるお金以上に、私にかかる給料を含めた経費の方が高くつくということ。ですが、これはあまりに理不尽でしょう。派遣先とのお金の交渉は、その担当者の仕事です。私が介入出来るところではありません。私はその言葉を聞いて、張り詰めていた糸が切れる感覚を覚えました。そして、その場で退職の意を伝えたのです。

私の決意を聞いた上司は、交通費を水増しして支給すると持ちかけましたが、私の決意は揺るぎませんでした。かくして、私は退職するに至ったのです。その後、幸運な事に私は派遣されていた工場の正社員に登用されました。その際に、契約規定で工場から派遣会社にいくらかのお金が支払われたらしいですが・・・。兎にも角にも、結果的に私の決断はいい方向に向いたのでした。これが、退職して良かった事でしょうか。そして、その時の工場への感謝の気持ちは、今も尚、私の胸に刻み込まれているのです。